2012年 06月 15日
ル・アーブルの靴みがき |
ストーリー
北フランスの港町ル・アーブルの駅前で靴磨きをして暮らしているマルセルは、
妻アルレッティと愛犬ライカとともにつつましい生活を送っていた。
そんなある日、港にアフリカからの不法移民が乗ったコンテナが漂着。
マルセルは警察に追われていた1人の移民の少年イングリッサと出会う。
そしてその頃、アルレッティは医師から余命宣告を受けており……。
キャスト・スタッフ
キャスト:アンドレ・ウィルム/カティ・オウティネン/ジャン=ピエール・ダルッサン
監督:アキ・カウリスマキ
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正義の味方ってどんな人たちのことを言うのだろう。
思い描く姿とは違うって?
でもね。
目の前にいるヨレヨレの服を着たおじいさん。
案外彼こそが正義の味方なのかもしれないよ?
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舞台はうらさびれた港町。
偶然アフリカからの不法移民の少年と出会ったマルセルは
少年を彼の母が暮らすロンドンへと逃がすために奔走。
そんなマルセルに、隣人たちも快く協力をする。
近所のパン屋にも八百屋にもツケが溜まっているような状態にも関わらず
少年を逃がすための莫大な資金を調達しようとするマルセルー。
協力することで、自分たちの立場が悪くなることも厭わず
迷いもなくマルセルに手を差し伸べる隣人たちー。
『どうしてこの人たちは、そこまでしてあげるのか』
映画を観ながら
そこに『理由』見つけたがっている自分にふと気がついて
思わず苦笑した。
彼らは皆、お金に余裕のあるような生活を送っているわけではない。
不法移民をさっと逃がしてあげられるような権力があるわけでもない。
ましてや少年と縁が深いわけでもない。
それでも何かあれば、その人のために立ち上がる。
友人である隣人のため。
異国の地で孤独の身になってしまった少年のため。
その先に気のきいたアイデアがあるわけでもない。
鮮やかな手腕があるわけでもない。
それでも目の前の困難に立ち向かっていき
ひとつひとつ解決していく。
そこにいるのは、とても不器用だけれどー。
自分たちなりの正義のもと、犠牲をも恐れず行動を起こすことができる人々。
かっこいいコスチュームに身をつつんでいるわけでもない。
颯爽とあらわれて、あっという間に悪人を倒すわけでもない。
高度な知識と教養でもって、事件を華麗に解き明かすわけでもない。
超人的な能力で、岩をも投げ飛ばす力持ちでもない。
でもね。
そこにいるのは紛れもなくヒーローたち。
監督のアキ・カウリスマキは、そんな愛すべき英雄像を
この映画で描いてくれたように思う。
最後の奇跡は、監督からそんな英雄への贈りもの・・・かな?
お気にいり度→★★★★☆
by bukubuku_abuku
| 2012-06-15 00:57
| シネマとアートと音楽と